空
「お願いがあるんだけど」
私はリビングの入り口に立ったまま2人に話しかけた
「なぁに?風羽」
ダイニングテーブルを布巾で拭きながら
お母さんは私に笑いかけた
お母さんは普通に笑顔を作ったんだろうけど
あまりに弱々しい笑顔に
目を反らして私は自分のつま先を見つめて話した
「空羽のケータイさぁ、このままにしてくれない?」
「え?」
「あの、たまにね…空羽にメールしたいなぁって……」
無理があるかな
私の話
「もちろん空羽がいない事は現実として受け入れてるから、大丈夫だよ」
言えば言うほど私の話はおかしくなって行くような……
とにかく空羽のケータイをまだ解約されては困るんだ
「ケータイ代は私がバイトの給料で払うし………」
「いいわよ。このままにしておく。大丈夫よ。風羽の気持ちわかるから」
お母さんの言葉にほっとする
「ありがとう」
私はリビングを出て
また階段を上った