重い沈黙だけが私と てっちゃんを包み込んで



「……お前、あの男が好きか?」



沈黙を破った
てっちゃんの低い声に



「………好き…なんだと……
思う………………」


小さな声で答えた



「じゃ、あの男に本当の事を言え」



「……でも………」

私の言葉を遮って


「言えないならっ!
………二度と、あの男に会うな」



にらみつける ように てっちゃんは私を見つめる



「好きなら、言え。言わなきゃダメだ。空羽だって、そう思ってる」



……空羽も…そう思ってる?



「ねぇ、てっちゃん」



私は床に座った自分のひざに
視線を落として訊いた



「空羽は私の事を怒ってない?」


てっちゃんは何も言わない


「空羽のためって言って

伊織くんと出逢って

伊織くんを騙したまま恋をして

……空羽は私を恨んでないかな?」



てっちゃんは私から顔を背けて


どんな表情をしているか


わからなかった



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