だけど てっちゃん



あの日、空羽は私のせいで


家を出たきり


帰って来なかった




「……空羽が………空羽は…」



空羽がいなくなった

あの日を思い出して

指先は氷のように冷たくなって


ガタガタ震えが止まらない



てっちゃんは腕に力を込めて
きつく私を抱きしめる



「ごめん。思い出させたな
ごめんな、風羽。大丈夫だ
大丈夫だから…………」



ガタガタガタガタ震える私の身体を優しくなでて



大丈夫、大丈夫


てっちゃんは何度も言った




「……空羽が……………
まだ……帰らない………」



私は空羽がこの世から消えたあの日の記憶に堕ちていった



てっちゃんの腕の中


「空羽が……帰らない…」



震えながら何度も言った



「大丈夫。風羽、大丈夫だから」



陽が暮れて暗くなっても


ずっと震える私をてっちゃんは抱きしめてた




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