春の雪が降る日


出逢って恋に落ちたのは


空羽


私じゃない



「君はオレの事をどう思う?」



「………え?」



伊織くんの言葉に

顔を上げ彼を見る



「君がオレにもう逢いたくないって言うなら仕方ないよ」



真っ直ぐ私を見つめて



「オレは君と一緒にいたい。

複雑なのはわかってるよ。

空羽ちゃんを亡くした君の苦しみ全てをわかってあげられないかも知れない。

でも、それでも、オレは君と一緒にいたい」



………伊織くん



「ど…どうして?だって私は……」


そこまで想ってもらえるような事してないよ………



「安心するんだ。君といると」


伊織くんは伏せ目がちに
呟いた


「……どうしてかは……
うまく説明できないけど……
君にそばにいて欲しい」



――――ドキンッ


伊織くんの言葉に胸は高鳴り
身体の内側からカァァっと熱くなる



だから


その時


彼の瞳の奥に宿る暗闇を
見つける事が出来なかった



――そばにいて欲しい


そう言った彼は
とても哀しげな瞳をしたのに



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