空
バイトが終わって
狭い店の裏にある事務所の片隅
ロッカーの前で制服をハンガーにかけて
バタンッとロッカーを閉める
バッグを肩にかけると
中でウ゛~ウ゛~
ケータイが震える
がさがさバッグを探り
ケータイに出る
「はい」
「オレ」
耳に てっちゃんの声
「今日さ、女、泊まりに来てもいい?」
………女
「いいよ。したら、私、実家に帰るね」
「わりぃ」
そう短く謝る てっちゃんの声は心無しか浮かれているようだ
ピッとケータイを切って
店を出る