空
伊織くんは缶ビール2本持って戻って来た
「飲める?」
そう訊いてカタンとテーブルに置いてベッドに座った
「大丈夫」
プシッと缶を開け
汗をかいた缶を握ると
手のひらが 濡れた
どうしよう
来ちゃったよ
どうしよう
どうしたら いいのっ?
緊張で頭の中はパニック
彼の部屋にお泊まりって事は……………
ドキドキドキドキする身体中
奥底に隠れる暗雲を私は見ないフリをする
TVの横の棚にDVDがたくさん並んでいる事に気付いた
ビールをテーブルに置いて
「映画好きなんだ」
そう言いながら棚の前に立った
「うん。すごく好き」
伊織くんはベッドに座ったまま
「何か観る?」と訊く
「うん」
上から順番にタイトルを見てると
棚の中程にあるDVDに目が止まり
そこから視線が動かせない
固まったように私はそのDVDを見つめていた