空
シネコンを出て
駐車場を歩く
私の数歩前を歩く伊織くんが
「気分は大丈夫だった?」
私を振り返らずに訊く
「うん。スッゴク感動したよ」
私たちが観ていた映画は
恋愛映画
伊織くんと付き合ってから
伊織くんが手を握りしめててくれると
私は恋愛モノを観る事が出来るようになった
あんなにダメだったのに
伊織くんが手を握りしめてくれるだけで
安心して素直に感動できるようになった
「風羽ちゃん、途中で涙ぐんでた」
からかうように私を振り返って伊織くんが笑う
「そ…そんな事ないよっ!」
カァァァァァァァァ
恥ずかしくなって否定するけど
「風羽ちゃん泣き虫だもんなぁ」
ポケットから車のキーを出して
伊織くんはニヤニヤ笑った