「………大丈夫だよ…」



相手をなだめるように
伊織くんの声はとても優しい




「大丈夫。心配しないで」




「もしもの事があっても………」




「いや、気持ちはわかるけど」




「医者の話、一緒に聞いただろ?」




「手術だって…うまく行くかどうか……」




もしもの事


医者の話


手術


お父さんの事を話してる





「泣くなよ………」


困ったような声



「あんたの泣き声を聞くと…
どうしていいか わからなくなる」




伊織くん………


伊織くん………




「大丈夫だよ。親父が死んだら
オレが守るから」





「当たり前だろ?」




「茜音と伊音はオレが守るよ」





「………伊音は……
オレと茜音の子供なんだから」




―――――………




頭が真っ白になる





「泣かないで茜音

大丈夫だよ。不安に思う事なんて何もないよ」




夢だ



悪い夢だ



私……まだ寝てるんだ



夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ



全部 悪い夢だ




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