空
伊織くん
もう いい…………
「考えたくないのに
茜音が親父に抱かれてるところなんて
苦しくて苦しくて
想像したくないのに
オレ、耳をすましてた
茜音はセックスする時どんな可愛い顔するのかな?
たまに聞こえる声はやっぱり可愛くて
想像してたずっと
眠れない夜ばかり過ごしてた
早く高校卒業して家を出たかった
早く家を出ないと怖かった
自分の気持ちがコントロール出来なくなってた」
「……伊織くん……」
「高3の冬だった
親父が友達と一泊で温泉に行ったんだ
あと少し、あと少しで家を出る予定だったのに
最悪だよ
一晩、茜音と二人っきり」
「いいよ…もういい…」
私が声をしぼり出して言った
「もう…止めて……」
「聞けよ」
伊織くんは私をにらんで
「悪い人でもいいんだろう?
最後まで聞けよ」