空
「嫌がる茜音を力ずくで
無理やり犯したんだ」
その一言を口にした伊織くんは
私から手を離した
ベッドにまた座って
「茜音、『何もなかった』って言ったんだ………」
「え………?」
私も起きて伊織くんの隣に座る
「『私と伊織の間には何もなかった』
茜音は次の朝そう言って
こっちが驚くほど普通に接してきた」
さっきまでの態度とは
打って変わって
力が抜けたように伊織くんは
ぽつり ぽつり話した
「でも変わった事が1つ
茜音、真夜中にトイレで戻してた
親父に抱かれた後、トイレで吐くんだ」
私は伊織くんの手をそっと握った
「怖いんだろうな。
当たり前だよ。オレが傷つけたんだ
でも親父を拒めばオレがした事を感付かれる
茜音は1人で堪えて
その上……妊娠してさ」
外はだんだん白んできた
「……どっちの子供だろうって
怖かった
生まれてきたのは………
風羽ちゃん、言わなくてもわかるだろう?」