「泣くよりもする事?」



私が両手でゴシゴシ涙を拭うと




空羽はうなずいて




「新堂さんと話をしなきゃ」




「え………?」



「風羽はスッゴクスッゴク新堂さんが大好きで別れたくないよって伝えるの」



「でっ…出来ないよっ」



「なんで?」



「だから、言ったでしょ?
伊織くんは私なんか好きじゃないの」



ズキッ
私のバカ


自分の言葉に自分が傷ついてるし




「新堂さんが信じられない?」




空羽は真顔で私を見つめた




「風羽を優しく包んだ 新堂さんの手を信じられない?」



伊織くんの手



優しい 優しい 伊織くんの手



私を救った手




「…………でも」



私は うつむいて



「空羽ならどうする?

あの日あんな事故に合わなきゃ今頃……私じゃなくて空羽が悩んでる問題なんだよ?」



空羽が生きてたら



私は伊織くんと付き合う事はなかった




空羽が伊織くんの彼女になって




今頃、泣いてるのは私じゃなく空羽なんだよ?




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