「それはない」



空羽はアッサリ答えた




「…………へっ?」



空羽は私を真っ直ぐ見つめ



「新堂さんは私じゃなく風羽を好きになったの」




そんな…



「違うよ空羽。伊織くんは誰でも良かったんだよ」



空羽でも私でも


茜音さんと伊音くんからの
逃げ道になれば


どっちでも良かったんだよ



空羽は眉をしかめて



「風羽。そんな事を本気で考えてるの?」



「だって……伊織くんが……」



「口先の言葉だけを真に受けて
新堂さんと風羽が今まで作って来たものには目を向けないの?」



「空羽?」



「風羽はいっつもそうだよ
人のため、誰かのためって言って変な遠慮して

自分の思った事に蓋をして

それでいつまでも傷ついて

そんな風羽を見て傷ついてる人もいる事に

風羽は気がついてる?」




空羽の目は必死に何かを私に訴えかけてる



私の我慢で誰かが傷ついてる?




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