ボートに乗って



新堂さんが漕いで湖をスイスイ進んで行く




波紋が静かに広がる湖面を見つめて



そっと指先を湖につけた




「冷たい」



私が呟くと



「空羽ちゃんは20歳だったよね」



新堂さんが口を開いた



「はい」



「どこの大学行ってるの?」



「K大の文学部………」



そう言ってから しまったと思う



K大は私が行ってるのであって



空羽はR女子短大の栄養学部に通ってた


「ふ~ん。頭いいんだね」



「……いえ」



まぁ大丈夫か………


新堂さんと会うのも
これっきりだし




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