そう言われて


何から話せばいいのだろう


ストーブの前に突っ立ってる私を伊織くんは目を逸らさずに見つめる




ドクン、ドクン、ドクン



伊織くんと話しが出来るのは今夜だけだ


今夜を逃したら一生後悔する



空羽が教えてくれたこと
無駄にしてはいけない



私は伊織くんの隣に座って



膝の上で手をギュッと握りしめた



ドキン、ドキン、ドキン、ドキン………


心臓の音だけが頭に響いて
クラクラしてきた



何も言えない私


伊織くんはずっと黙ってる



「………あの、あのね伊織くん」



私を見つめる伊織くんは真顔で何も感情を読めなかった



もしかしたら伊織くんは私以上に緊張しているのかも知れない



怖くなって目を逸らしたくなったけど、そんな自分に負けてはいけない



伊織くんが好きなら


諦められないなら



負けてはいけない



< 315 / 394 >

この作品をシェア

pagetop