バッと冷たく腕を振り払って



「………やめろよ」



伊織くんはうつむいて
低い声で呟くように言った



「やめろよ。

優しいなんて………
違う、オレは一度だって
風羽ちゃんのこと………」




哀しげに伊織くんの顔が歪む



「風羽ちゃんを利用してただけなんだ。オレは……」



苦しそうに伊織くんの声が震える



「風羽ちゃんのこと……
好きじゃ………………」



それ以上 伊織くんは何も言えなくなった



ただ悔しそうに哀しそうに
眉を寄せて うつむいて




「これ以上、話しても無駄だよ風羽ちゃん………

一緒にいたってお互いに辛くなるだけだ………」




違う


違う


そんなんじゃない



「どうして?辛いって言うなら、私はずっと辛かったよ」



伊織くんと別れてから


ずっと辛かったよ


暗闇に置いてきぼりにされて


私は迷子になった


こうして今 伊織くんと向き合ってる


私は もう迷子は嫌なんだよ


ちゃんと伊織くんのいる前で


出口を見つけたい………



< 317 / 394 >

この作品をシェア

pagetop