伊織くんは私に背を向けて



「いつも何かが…………
確かにそうかもな」


後ろ姿だったけど


伊織くんの背中からは


何かを観念したかのような空気が出てた



「私は伊織くんが好きだよ

これが最後でいいから……

伊織くんの本当の気持ちに触れたい…………」




伊織くん


伊織くんの気持ちを知りたい



何もかも取り払って



伊織くんの気持ちに



触れたいよ




「…………だったよ…」



掠れて最初の言葉が聞き取れない伊織くんの声が聞こえた



「え?」



伊織くんは ゆっくり私を振り返って




「好きだったよ………

風羽ちゃんのこと

本当は風羽ちゃんのそばにずっといたかった」



伊織くん…………



「最初は茜音と伊音からの逃げ道にしようと思ってた

でもきっと風羽ちゃんと初めて会った時から好きだったんだ

自分で気がついてなかっただけで

そうじゃなきゃ、一緒になんていられないよ

お互いにややこしい問題抱えてんのにさ」



そう言う伊織くんの手は少し震えていて


やっと彼と初めて向き合えた



そう思った




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