空
好きだったよ
その言葉を聞けて
胸が熱くなるのを感じた
我慢して我慢した涙は
堰を切ったように流れ出して
伊織くんの胸にぶつかるように抱きついた
「好き、伊織くんが好き」
何度も泣きながら伊織くんが好きって繰り返して
伊織くんの背中に腕を回して猫のように爪をたてて しがみついた
「………風羽ちゃん……」
そっと伊織くんの手が私の背中に触れたけど
伊織くんは私の肩を掴み身体を引き剥がすように力を入れた
「でも風羽ちゃん………
オレは………………」
私は首を何度も横に振って
伊織くんに剥がされまいと
背中の服をギュッと握りしめる
「嫌だ!嫌だよ!これが最後でも構わない
一度だって恋人になれないまま離れるなんて嫌だ!」
彼の胸に鼻の頭を押し付けるようにして叫んだ
「今夜だけでいいから
何もかも捨てて、ただの恋人になりたいよ
初めて私たち向き合えたんだもん
離れるなんて嫌だ!」