まるで 駄々をこねる子供だった



嫌だ、嫌だって伊織くんの胸で泣いた



茜音さんのことも
伊音くんのことも



今夜だけは取り払って



何も間に壁などない


ただの恋人同士になりたかった



明日のことなど考えないで



今、この瞬間



解き放ったお互いの心を
重ね合わせたい






「好き………好きなの伊織くん
好きだよ………………」





「―――――――………っ」


一度 苦しそうに息を吸った伊織くんが



次の瞬間



私の身体をきつく抱きしめた




――――――ドキッ



身体に腕が食い込むんじゃないかってくらい



きつくきつく抱きしめられて




「伊織く……」



腕を緩めたかと思ったら



素早く伊織くんの両手は私の頬を包んで



柔らかい唇が重なった




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