閉まった玄関のドアを見つめて





「もう…いいよね」



「もう…いいよね」



そう繰り返し呟くと



涙が一斉に溢れ出して



ガクッとひざの力が抜けて



その場に崩れ落ちて



「うわぁ―――――――っ」



1人で泣いた


たくさん泣いた


身体には まだ伊織くんの感触が残ってる



伊織くんのぬくもりや


身体の重み


汗の味


唇の柔らかさ


低い声




全部 全部
私の中から消えないように



私は
自分の身体をきつく抱きしめた



これからの人生を



最後にくれた伊織くんの全てを 支えに


やり過ごして行かなければならないから





愛してる 愛してる 愛してる

伊織くん 愛してるよ



ずっと ずっと愛してる



「…ふっ…、うぅぅ……」



身体中が震えて
涙は止めどなく流れて



哀しくて 哀しくて


胸を引き裂く痛みは耐え難くて



でも それでも


私は後悔なんて1つもしてない



伊織くん幸せになってね



その言葉に1つも嘘はないから



< 333 / 394 >

この作品をシェア

pagetop