空
閉まった玄関のドアを見つめて
「もう…いいよね」
「もう…いいよね」
そう繰り返し呟くと
涙が一斉に溢れ出して
ガクッとひざの力が抜けて
その場に崩れ落ちて
「うわぁ―――――――っ」
1人で泣いた
たくさん泣いた
身体には まだ伊織くんの感触が残ってる
伊織くんのぬくもりや
身体の重み
汗の味
唇の柔らかさ
低い声
全部 全部
私の中から消えないように
私は
自分の身体をきつく抱きしめた
これからの人生を
最後にくれた伊織くんの全てを 支えに
やり過ごして行かなければならないから
愛してる 愛してる 愛してる
伊織くん 愛してるよ
ずっと ずっと愛してる
「…ふっ…、うぅぅ……」
身体中が震えて
涙は止めどなく流れて
哀しくて 哀しくて
胸を引き裂く痛みは耐え難くて
でも それでも
私は後悔なんて1つもしてない
伊織くん幸せになってね
その言葉に1つも嘘はないから