空
「ど……どこで………」
動揺するな
そう言われたのに
声も手も足も震えた
「職場の同期と飲みに行った店で偶然だよ
伊織くんも知り合いと飲んでたみたいだったけど
オレと目が合った瞬間
相手に謝って、オレに少し話が出来ないかと言って来た」
伊織くんが てっちゃんに……
「オレも無視出来ねぇし
同期残して伊織くんと別の店に行ったんだ」
ドクン、ドクン、ドクン、ドクン
心臓の音ばかり響いて
目の前チカチカ光る
ヤバい。
伊織くんの名前聞いただけで
もう冷静じゃいられない
てっちゃんは一度、私に「大丈夫か?」と訊いた
震える手をテーブルの下で
強く握りしめてから
うなずいた
「店で向き合って開口一番
伊織くんは
『風羽ちゃんは幸せにしてますか?』
そう訊いて来たよ」