――――ずっと独りだ――――










嘘…………………



バンッ

私はテーブルに両手をついて


身を乗り出した




「なんでっ!

なんで伊織くんが独りなの?

だって、あの人、伊音が可愛いって…………

茜音さんと伊音くんを選んだの……に………」



そう言うと
急に身体から力が抜けた



テーブルの上に置いた手を
ダラリと下に下げ



肩を落とした




「……不器用なんだろう
伊織くんって人は


伊音くんには養育費だけ毎月払って離れて暮らしてるって


意外と商才はあるみたいで
本屋、少し大きくなったぞ」




「一度も……茜音さんと結婚しなかったの……?」



声には全然 力が入らない



てっちゃんは うなずいて




「ずっと独りだ」



そう言った




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