空
「………はい」と遅い来客に訝るように伊織くんの声が聞こえて
あぁ、ドアの向こうに
伊織くんがいる
それだけで胸が苦しく
倒れそうなくらいだった
ガチャン…
ゆっくりドアが開いて
ドアの陰から少しずつ彼の姿が見える瞬間は
スローモーションのようだった
伊織くんは目を見開いて
「――――――………っ」
口を開いても
何も言えないようだった
それは私も同じだった
6年ぶりに会えた
あの夜から
やっと 会えた