どのくらい ただ黙って見つめ合っただろう




「なんで?」


伊織くんがやっと一言 口にした




「………あ、あのね……」


私が言う前に


「てっちゃんか?」


私は コクコクうなずいた



はぁ―――――――――って
深い伊織くんのため息が聞こえて



「話さなきゃ良かったな」


困ったように頭をかいた



「い、伊織くん………」


私はもう何を言っていいのか
わからない



「とりあえず、入りなよ
風羽ちゃん」



――――風羽ちゃん――――



彼に名前を呼ばれて


あ~、もうダメだって思った



胸がしびれて



いつだって伊織くんの前では



冷静にいられない




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