リビングに通されて


ソファーに座ると



「どうぞ」


伊織くんはコーヒーを出してくれた



テーブル越し向かい合って座ると



伊織くんは とても優しい表情で
私を見つめた



―――――ドキン


胸が高鳴って締め付けられる



「変わらないな…風羽ちゃん」


伊織くんの声を聴いて


カァァァァァァァ…………
顔が一気に熱くなった



しばらく沈黙が続いて



聞きたいことがあって来たのに


何も言えない


胸がいっぱいで


身体が全然動かない


そんな私を伊織くんは優しく笑って



「大丈夫だよ。風羽ちゃん」



「え?」



「オレが独りでいること、気に病んだんだろ?

大丈夫だよ。

茜音と話し合って決めたことなんだ

風羽ちゃんが気にすることは
何もないんだよ」



穏やかな口調で


伊織くんは
マグカップに口をつけた



カップの取っ手にかかった
伊織くんの指先を見て


ドキドキドキドキ………


心臓が激しく反応した



私は伊織くんが好きだ



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