空
「ど…どうして、茜音さんと結婚しなかったの?」
私の質問に
一度 伊織くんは目を伏せて
考え込んだ
「言っただろ?
茜音はオレのこと好きじゃなかった
だからだよ」
伊織くんが そう言って
私に笑いかけた
茜音さんが伊織くんを好きじゃなかった?
「嘘つかないで」
私は伊織くんを真っ直ぐ見つめた
「どうしてオレが嘘つくんだよ
茜音はオレが嫌だったんだ」
「嘘だよ。茜音さんは伊織くんを想ってた」
伊織くんは むきに なったように
「なんで風羽ちゃんにそんなこと…………」
「茜音さん本人に聞いたからだよ」
伊織くんは「茜音に?」と驚いたように言った
「覚えてない?
ショッピングモールで偶然会った時
私と茜音さん二人で話したこと」
伊織くんは少し考えてから
「あ……」と思い出したように呟いた