口元に手を当てて


目をおよがせる伊織くんに



「あの時、茜音さんも伊織くんが好きだと聞いたから

ねぇ、伊織くん

なんで嘘つくの?」


伊織くんは私をきつく にらんで



「風羽ちゃんには関係ない

もう帰れよ」


冷たく言い放った




「関係ないことないでしょう?」


私は伊織くんに


「私は伊織くんが好きなんだよ?

どうして関係ないなんて言えるの?

私はずっと伊織くんが………」



「結婚するんだろ?」



「――――――………」



彼の言葉に私は固まり


婚約者の顔が浮かんだ



伊織くんが首を横に振って



「オレたちは終わってる
6年も前に

帰りなさい

今さら会うべきじゃないんだ」




伊織くんは責めるわけでもなく


静かに言った


だから それは彼の本心だと


すぐにわかった




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