「忘れるんだ。風羽ちゃん

そして幸せになって

優しい人なんだろ?
オレと違って」




伊織くんの言葉を聞く度に



波のように感情が寄せては ひいていく



忘れる?


一度だって伊織くんを忘れたことなんてない



「無理、………無理………」



私は 気がついたら涙をこぼしてた



「伊織くん無理だよ

伊織くんが独りでいるなら
私は伊織くんと…………」



「ダメだ」



「ねぇ、伊織くん…なんで茜音さんと結婚しなかったの?」


伊織くんは 辛そうに顔を歪ませて



「最後に見た君の涙が頭から離れなかったから」










頭が真っ白になった



もうダメだ




何も考えられない





「だけど、だからって

風羽ちゃんは何も気にすることはないんだ

もう終わったこと…………」



伊織くんが言い終わる前に


私は立ち上がり


彼の胸に飛び込んだ



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