空
「いや、いやだ
私はもう伊織くんが独りだと知ってる
もう戻れないよ
お願い、お願い、私は伊織くんが好き
好きなんだよ」
伊織くんの胸元を掴んで
「愛してる。私はいつだって伊織くんを愛してる
私の胸には永遠に伊織くんがいる」
すがるように 涙を流して伊織くんを見上げた
「悪いけど
他の人と結婚を決めた君なんて受け入れられない」
伊織くんは冷たく
私を見下した
「もう一度言うよ?
君とオレは6年も前に終わった
今さら、オレが独りだからって
泣かれても迷惑だ」
「伊織く………」
「他に婚約者のいる君みたいな面倒くさい女
迷惑だよ
早く帰ってくれ」