空
いつも見てるよ
空羽の声が聴こえる
「空羽
私、ひどい人間になっていい?
優しい婚約者を裏切って
自分のワガママ押し通していいかなぁ?」
首が痛くなるほど反らして
夜空に向かって話した
「私、このまま結婚したら
一生、後悔する
ただの私のワガママだよ
だけど、やっぱり
誰を傷つけても――――――………」
何も言わない夜空に向かって
「伊織くんが好きだ」
伊織くんが好きだ
何度も胸の中で
噛み締めるように言った
伊織くんが独りだと
今夜てっちゃんに聞かなかったら
明日は婚約者と両親に挨拶してた
幸せになります。
なんて言いながら
だけど、もう私は伊織くんが独りだと知ってる
知らなかった明日なんて
どこにも存在しない