ラストライブ
*6
ライブが終わると、栄が浅美を捜している姿が目に映った。
しかし浅美は、その後の彼を追うことはしないことにした。
栄は、高校を卒業したら大学へ進学し一人暮らしをするという。
新しい電話番号や住所だって、聞き出そうと思えば聞き出すことができた。
だが、それはなんだかしてはならないことのような気がした。
全ては、このライブハウスという名の空間の中においてだけ許される行為だと思った。
ここから出れば、カボチャの馬車はただのカボチャ、白馬はネズミに、そして肝心の王子さまだってただの疲れた受験生になってしまうかもわからないのだ。
そんなことはしたくなかった。
大事な思い出は、大事な思い出のままで、そっと胸の中にしまっておきたかった。
浅美は、ライブハウスを出ると振り返らずに駅の方向へと向かった。
一緒に出てきた絵梨は、「打ち上げには出ないの!?」と聞いた。
「うん。」と短めに浅美は答えた。
カボチャの馬車の例え話をしたって、きっと絵梨にはわからないだろうからだ。
しかし浅美は、その後の彼を追うことはしないことにした。
栄は、高校を卒業したら大学へ進学し一人暮らしをするという。
新しい電話番号や住所だって、聞き出そうと思えば聞き出すことができた。
だが、それはなんだかしてはならないことのような気がした。
全ては、このライブハウスという名の空間の中においてだけ許される行為だと思った。
ここから出れば、カボチャの馬車はただのカボチャ、白馬はネズミに、そして肝心の王子さまだってただの疲れた受験生になってしまうかもわからないのだ。
そんなことはしたくなかった。
大事な思い出は、大事な思い出のままで、そっと胸の中にしまっておきたかった。
浅美は、ライブハウスを出ると振り返らずに駅の方向へと向かった。
一緒に出てきた絵梨は、「打ち上げには出ないの!?」と聞いた。
「うん。」と短めに浅美は答えた。
カボチャの馬車の例え話をしたって、きっと絵梨にはわからないだろうからだ。