今日も、恋する電車。
今日も、恋する電車。
いちにちのはじまりは、しろで、はじまる。

暗闇から光がさしこみ、空が白く染まりはじめた。季節は夏が近いというのに、朝はまだ肌をひやりと冷やす。

櫻井 茜は薄いカーディガンを羽織り、自分の体を抱きしめた。薄暗いホームで電車を待つ。がたがたと音をたてて、銀色の電車がホームに入ってきた。 

茜は紺色のセーラー服のスカートを揺らして、前から二両目に飛び乗る。車内は始発のこともあり、人の姿はまだまばらであった。

ゆっくりと車内を歩く。足からじんじんと電車の振動が伝わってくる。

奥の端の席に、本を読む学ラン姿の少年がいた。

少年はすらりと長い足をもてあまし気味に伸ばし、腰かけている。

茜は顔をほころばせ、少年に歩みよった。

「水島、おはよう」
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