今日も、恋する電車。
車内は、かたんかたんゆれ動く。振動音と、人の動きの音しかしない、閉じた世界と化した。わずかにふれる保の体温が、茜の頭にじんわりと伝わる。
このまま身をゆだねて、側にいれたらどんなにいいかと茜は願った。
地元から離れた私立の女子高に通い始めて、数ヶ月が経つ。
茜と保は元々小学校の同級生である。
中学の頃は保が地元から離れた中高一貫の男子校に通い、茜が地元公立の中学に通っていたので殆ど会う事はなかった。
再会したのは私立の女子高に入学してすぐ、陸上部に入部してからである。
早朝練習に参加する為に、始発に乗ると、偶然保がいた。