今日も、恋する電車。
昔と変わらない姿の茜に気がつき、保が声をかけたのだ。
昔の保は教室の片隅で大人しく本ばかり読んでいるイメージだったので、最初保に会ったとき、茜は気づかなかった。
昔よりずいぶんと背丈が伸びていた。
愛らしかった顔立ちはシャープに削られ、髪も染めて大人っぽくなった保に、茜の胸がざわざわと音をたてた。
小学校の時に特に仲良かったわけではないが、互いに昔を知っているという安心感から会うたびに言葉を交わすようになり、茜にとっては楽しみでならない時間となっていた。
『次は、二宮、二宮です』
車内アナウンスに、保はぴくりと本をめくる手を止めた。
茜はくちびるをかみしめる。