村崎指揮部(更新停止)
完全に罠にハメられた。
というよりも奴は気付いていたのだろう。
「ところで子門君、君は何で3時間目この教室に居なかったのかな。」
「…体調が悪くて、それで……」
「保健室?」
「はい。」
「ふーん。」
尋問は続いた。
最終的に奴が聞き出したいことは容易に想像できた…
「何でお前は平気なの?」
…核心をついてきた。
俺は怯まず聞き返してみた。
「お前こそ何者だよ。」
「留学生。さっきも言ったろ。」
「そんなことを聞いてないことくらい理解できるよな?」
「じゃあどうする?」
「……………」
「俺を退学させるか?」
見た目とは裏腹に流暢に語られる日本語が嫌味に聞こえた。
「…催眠術の類いか何かか。」
「たいへんよくできました。」
「俺には掛からなかったみたいだがな。」
「だね。何で?」
表情にはまだ余裕が伺える。
ひょっとしたら、まだ何か切り札を握っているのかもしれない。
「……………」
「催眠が効かないなら…拳で片を着けようか。日本人はそういうの好きだろ?」
「……………」
「俺が怖い?」
一思いに頷いてしまいたかった。
見えない恐怖と葛藤するくらいなら…
「どうすんの?」
「……………」
「今さら催眠が効いてきたとか言わないよね?…下手な芝居はやめろって。」
執拗に迫る奴に勝負を挑むのが打開策とは言えなかった。
でも、それは…
賭けだった。
「来いよ。」
我ながら自分を惚れ直した。
それと同時に激しく後悔した。
「お前マジで馬鹿だな。」
不敵に笑ってみせる村崎に向かって…
俺は力一杯に拳を振り上げた。