二人のための静かな場所
「この人は、桐本セイイチくん。
遠征のセイに、
数字のイチで、
征一くん」

私は、征服のセイと一等賞のイチを、
妹の彼氏と結びつかせるまでに、
二度のまばたきが必要だった。

妹は私のそんな様子なんてお構いなしに、
次いで私の紹介を始めた。

「私の姉のヨウコ姉さん。優しいに子で優子」

凡庸な男ーー桐本は、
私という人間に、
優しいあるいは優秀の、
優の字をうまく結び付けられないようで、
曖昧な笑みを浮かべ、
頷きとも会釈ともとれる動作で応えた。
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