あの頃へのラブレター
十四通目…みっちゃんへ
この前は、わざわざお土産をありがとう。
お袋の好物、よく覚えてたね。
お袋も喜んでました。
それにしても、こっちに帰って来る度に、みっちゃんには何時もビックリさせられます。
高校を卒業して、東京の大学に進学したみっちゃんが、初めて里帰りした時、すっかり垢抜けて、まるでテレビのアイドルのようでした。
それから暫くして、急に前触れもなく帰って来た時、何だか見ていられない位にやつれてたっけ。
あの時、みっちゃんは言ってたよね、東京に戻らず、ずっとこっちに居ようかなぁって。
そうしろよって言ったら、ありがとうって言ってくれて、俺、その言葉を聞いてすごく嬉しかったのを憶えてます。
でも、やっぱりみっちゃんは、東京へ戻るんだろうなという予感はありました。
予感は的中して、三ヶ月後に東京へ戻り、それから何年も帰って来ませんでしたよね。
その時、もっとちゃんと引き止めてれば良かったと、本気で後悔しました。
結婚したという話しは、お母さんから聞いてましたけど、子供も出来てたんですね。
久し振りに逢った時には、すっかりお母さんの顔になって……
本当に、みっちゃんには驚かされるばかりです。
駅迄見送りに行った時、俺に、
「お嫁さん貰わないの?」
と聞いて来ましたが、何も答えなかった俺を見て、
「高望みし過ぎちゃ駄目だよ。」
みっちゃんをお嫁さんにする事は高望みなのか……
そう言いそうになりました。
家に戻ると、みっちゃんのお母さんが来てて、
「てて親のおらん子をこさえて、どうすんだべ……」
と、お袋に話してたのを聞きました。
どういう事情があったかは、詳しく知りません。
ですが、漸くこれで心が決まりました。
明日、この手紙を持って、東京へ行きます。
みっちゃんの、帰りの切符も同封して……