7年目の浮気


「酒田さん、しっかりして。」


芳雄はすっかり酔い潰れた香織を歩かせていた。


「うぅん。」


こいつ、まさかフリじゃねぇだろうな…。

ぴったりとくっついてくる香織の酔いっぷりに疑いを感じはじめる。


くそっ。


「酒田さん、この路線でいいんだよね?乗るよ?」

「…。」


芳雄は香織を半ば無理矢理地下鉄へ乗せると息をついた。

茉莉花からメールが来ていたが、今の状況を説明するわけにもいかないので、仕事が長引いていることにした。

それより、香織をどうするか。
この路線でいいはずだが、降りる駅までは知らない。


「酒田さん、どこで降りるの?」

「…。」

「酒田さん!」

「…久保田さんは?」

「俺はあと三つだよ。」

「じゃあわたしも。」

「…。」


困った。
こんなにしつこいことはない。
どうしたものか。
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