鈴姫
「なあ紲」
「なに?」
「苺が大泣きした事件、覚えてるか?」
「え?あ、あぁ」
苺は普段からよく笑ってる。
俺たちに泣き顔は見せない。
陰で泣いたりしてるんだろうけど。
そんな苺が一度だけ……小学校の時に俺たちの前で大泣きしたことがあった。
それは――
「あの時さ、お前が散々バカにされて、珍しく怒って泣いてたんだよな」
「そんなこともあったな……」
苺から聞いた話だと、俺がバカという当たり前な言葉から始まり、頭のネジが全部抜けてるだの、行動がおかしいだの、奏真がいないと何もできない背後霊だの、いろいろ言われてきたらしい。
そしてあの温和な苺が三人の男を三人ともビンタして、泣きながら俺たちのところに来た。