君ニ花ヲ…
勇太郎の目の前にはソラが座っていた。
勇太郎は美咲と愛子がテーブルの元にやってくると、ソラの目の前の席からソラの隣の席へと移動した。
そして愛子が勇太郎の前に座り、自然と美咲がソラの前に座る形となった。
「狩野美咲ちゃんだよね?話はよく愛子から聞いてる。俺、時枝勇太郎。よろしくな」
勇太郎は美咲に笑いかけた。
「あ、こっちは河合高空(タカヒロ)。みんなからはソラって呼ばれてるんや。」
「は、初めまして。狩野美咲です」
美咲はソラに軽く頭を下げた。
茶髪の無造作ヘアのソラはただ美咲を見るとまたコーヒーを飲み始めた。
「美咲、あんまり気にしないで。こいつの無口はいつものことだから」
愛子は苦笑いするとソラの肩をバシッと叩いた。
「へー、美咲ちゃんってピアノ得意なんや。ピアノ得意な子っていいなあ。な、ソラ?」
勇太郎は話すたびに話をソラに振った。
「ん…」
ソラはまたコーヒーをすする。
美咲はソラをちらっと見て居心地の悪さを感じた。