君ニ花ヲ…
雲の切れ間に差し込む花
部活が終わり、ソラが帰宅するのはいつもだいたい夜の9時過ぎ。
「ただいま」
小さな平屋の一軒家が河合家の家だ。
家は少しだけ年代を感じさせるが、きちんと掃除がされ、清潔感を感じさせる。
家の横には少しだけ広い庭がある。
前までは花でいっぱいだった庭だが、今は少しだけ雑草が生えていた。
ソラは玄関を上がり、リビングへと向かう。
リビングの横の和室には、ソラの母の楓がいた。
「おかえり、高空」
楓はソラに笑顔を向ける。
「起きて大丈夫なのかよ。体調は?」
ソラは布団の上で体を起こしていた楓の元に向かう。
そして、楓の枕元にあったピンクのカーディガンを楓の肩にかけた。
「ありがとう。今日はなんだか体調がよかったのよ。天気が良かったからかもしれないわね」
「それならよかった」
「高空。ご飯出来てるから一緒に食べましょうか。先にお風呂入ってきなさい」
「ああ。分かった」
ソラは楓にそう言われ、浴室へと向かった。
ソラに父親はいない。
両親が離婚し、母親が引き取ったのだ。
ソラの家族は母と8歳上の兄の友信のふたり。
ソラの母、楓はもともと体が弱く、特に10年前から体調が悪く、寝たり起きたりを繰り返していた。
しかし、体調が良い時にはソラに温かいご飯を作ってくれる。
兄は自分のために、学費を払ってくれている。
ソラは家族のありがたさは身にしみて分かっていた。