君ニ花ヲ…
「こんにちは!」

愛子はサッカー部の部室を勢い良く開けた。


「うわ、なんだよ!」


「なーんだ、まだソラしか来てないんだ」



愛子は部室でボールを整理していた一人の男子を目にし、ふーっとため息をついた。


「勇ちゃんはー?」


「まだじゃねー。俺らクラス違うし、分らん。」


「へー、ソラ何組だったの?」


「7。」


「勇ちゃんは?」


「5。」


「そっか」


ソラは黙々とスパイクの紐を結ぶ。


愛子もロッカーからキーパーとポカリの粉を出し、飲み物の準備を始めた。


コンクリート壁の部室はまだひんやりと冷たい。


小さな窓からは少しの光が入るだけ。


それから何人か部員がやってきて少しずつにぎやかさを増す。



しばらくしてまた部室の扉が勢い良く開いた。


「こんにちは!!」

部員全員が一斉に扉のほうを振り向く。



「勇ちゃん!!」


愛子はそこに立つ勇太郎の姿をみるとぱあっと顔を明るくさせた。



「愛子。もう来てたんやな。」


「勇ちゃんが遅すぎるんだよ!」


「すんません。あ、先輩達LHRが長引くみたいだから先に練習始めといてって言ってはったわ」



「そうなの?じゃあ、勇ちゃん早く着替えないと、みんな準備できてるし」


「ああ」



部員達は愛子と勇太郎のやり取りをニヤニヤしながら眺めていた。

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