君ニ花ヲ…
ソラから受け取ったタオルで頭を拭きながら、美咲はリビングへと上がった。


「あら、お友達?」


奥の部屋からソラの母の楓も出てきた。


「あ、初めまして。お邪魔してます。ソラ君と同じ高校の友達で…狩野美咲といいます」


美咲は急いでお辞儀をした。


「高空の母です」


楓はやさしい笑顔を美咲に向けた。


そして楓は美咲の濡れた恰好を見て少し驚いた表情をする。


「美咲ちゃん、ずぶぬれじゃない。今、着替え持ってくるから待っててね」


「あ、ありがとうございます」


楓はぽんと美咲の肩をたたくと部屋へと着替えを取りに行った。


「いいお母さんね」


美咲はソラに言った。


「ああ」


そしてソラは一言そう答えた。



美咲は楓のシャツとズボンを借り、おまけに楓は暖かい晩御飯までごちそうしてくれた。



「おいしい。こんなに温かい夕食は久しぶりです」


美咲はご飯へと箸を伸ばす。


「そう?よかったわ」


「あたし親とは別に暮らしてて、いつも夕食はひとりだから…」


しばし沈黙が流れる。


「あ、ごめんなさい。なんか暗い話しちゃって。でももう一人も慣れてるから大丈夫なんですけどね…」


「美咲ちゃん、ひとりが平気なんて人はいないわ。あ、そうだ。たまにうちに夕食食べに来なさいよ」


楓はそうだわと言って美咲の肩に触れた。


「そんな、申し訳ないです」


「そんなことないわ。あたしが調子いい時しか御馳走できないけれど、そうしなさい。ね?ソラもそう思うでしょ?」


「いいんじゃね?」


ソラは一言呟いた。


美咲の心は温かい気持ちでいっぱいになった。


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