君ニ花ヲ…
それから美咲は時間がある時はソラの家に行った。

楓が手入れのできなかった庭は美咲によってきれいに整えられた。


美咲が来るようになってからは楓の体の調子も随分と良くなったようだった。


｢アガパンサス、プルメリアにノボタン、ダリア…。夏の花でいっぱいね｣


楓は庭をうれしそうに眺めるのであった。


そして美咲も楽しみを見つけ、充実した日々を送るようになった。


遅くなった日はソラが美咲を家まで送ってくれる。


しだいに二人の距離は近くなっていった。



｢なんかさ、最近ソラが前よりも丸くなった気がせん？｣


屋上からぼんやりと青空を見上げながら勇太郎が呟いた。


｢え？ソラが太ったってこと？｣




勇太郎は呆れながら愛子を見る。


｢うそうそ。あたしもそう思うよ。ソラを変えたのは美咲かもね｣



｢そうやなあ｣



二人の声は空高く吸い込まれ、一筋の風が通った。



そしてソラと美咲が付き合い始めたと二人が知ったのは八月になってからだった。
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