君ニ花ヲ…
「二週間後に父さんたちがこっちに戻ってくるみたいだから」
肉をナイフで切りながら美波が言った。
「は?何で?マジありえねー」
蓮哉は美波の言葉に喰い付いた。
美咲も動揺を隠せない。
「日本への出張よ。そのついでに家にも帰ってくるってさ。昨日母さんから連絡あったのよ。蓮哉、あんた、それまでには髪の毛の色元に戻しなさいよ」
「うるせー」
蓮哉は茶髪の明るい自分の髪をガシガシと掻いた。
美咲たちの父親は大手貿易会社の幹部。
ほとんどを外国ですごし、母も父に付き添っていた。
だから、幼いころから姉弟たちだけで暮らしてきた。
前までは家政婦が何人か住み込みで世話をしてくれていたが、今は蓮哉がそれを嫌がるため、昼間だけ一人の家政婦に来てもらい家のことをしてもらっている。
「美咲も何か言われないようにある程度はちゃんと勉強しておいたほうがいいよ」
「うん」
姉の言葉に美咲は静かに答えた。