エア・フリー 〜存在しない私達〜《後編・絆》
ビュイック社のリーガルセダンは落ち着いてて中年向きかもしれないな‥

俺がかぶり付く様に見ているので店の中からオーナーらしき男が出てきた。

「リーガルをお探しですか?」

その男は20代半ばぐらいだが、青いアロハシャツにホワイトのスリムのジーンズで靴は白と黒のラバーソウルを履いて、驚いた事に今時リーゼントを決めている完璧な50年代のアメリカン野郎だった。

これだけの出で立ちの若者は本場のアメリカを探してもそう多くはいないだろう。

もっとも俺らの年代では流行った事のある格好なので今だにそれをやり通している親父ならたまに見かけるが…。

「いいね〜この車。それと兄ちゃんの頭も決まってるよ。」

「ありがとうございます。」

まんざら店や車の宣伝ばかりじゃなく本当に古き良きアメリカを愛しているのかもしれないな‥と思った。

「兄ちゃん!これいくら?」

俺がリーガルを指差すと、オーナーは困った顔をした。
「申し訳ありません。その車は売り物じゃないんですよ。」


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