エア・フリー 〜存在しない私達〜《後編・絆》
ますます快調に走る愛車リーガルの中で、弥生は息子に買ったポロシャツやジーンズを出して眺めている。

「俺もそういうヤツで良かったんじゃないの?俺の齢知ってる?もう50近いんだせ。」

「でも全然、お腹が出てないから似合ってますよ。お腹で止まっちゃったら格好悪いですからね。」

そこまで言われるとまんざらじゃないが、明らかに俺が選んだワンピースが気に入らなくての仕返しと思う。

可愛い顔しててもやっぱり女は恐い。

俺たちはそれから約三時間完全に日が落ちるまで車を走らせ、町外れのコンビニの横に大きな空き地のある場所に車を止め、そこを今夜の寝ぐらに決めた。

幸いその空き地もコンビニの所有らしく大型のトラックが数台止まっていた。

その中に紛れて止めたので県道からは全く見えない。

後は一分でも長くトラックの運ちゃんたちが仮眠してくれる事を願うだけだ。

俺たちはコンビニで夕食と酒を買うと、早速、愛車の後ろを全部倒してくつろげる空間を作った。

弥生はアルコールが全くダメらしいのでジュースを持ち、俺はビールで乾杯をした。

「とりあえず、今、生きてる事に乾杯!」

「乾杯!!」


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