エア・フリー 〜存在しない私達〜《後編・絆》
「俺は…親友とその家族を殺しました。」

弥生にすがるようにして俺は過去の話しをし始めた。

「正確に言えば俺の借金を背負わせてしまった……。
俺とそいつは同じ島の育ちで親友でした。
高校を卒業と同時に一緒に上京したのですが、彼は高卒の割りにはいい会社に入った方でした。
俺はイタリアンのレストランで働き、自力で調理師の資格も取りました。
そこのオーナーがとてもいい人で、勤めて5年でオーナーのバックアップもあって俺は小さいけど自分の店を持つ事が出来たんです。
彼も俺も割りと若い頃にいい伴侶に出会い、俺には男の子が一人、彼は一姫二太郎プラスもうひとりの姫まで授かりました。
彼は真面目なヤツでマイホームを持つのが夢だったので保母をしている奥さんと二人三脚でコツコツとマイホーム資金を貯めている事を知っていました。
俺は先に自分の店を持てたのでアイツの夢も叶えてあげたかった。
しかし、人間って欲の固まりです。
当時、空前のイタリアンブームが起きたので、店は大繁盛。
それに開業して5年もすると、今のままじゃ手狭だと考えるようになっていました。
俺は別な場所にもっと広い店と駐車場を建て直したいという考えに取りつかれてしまいました。


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