エア・フリー 〜存在しない私達〜《後編・絆》
モチロン、世話になった前のオーナーにも相談しましたが『ブームは一過性のものだから、またいつかは去る。だから今のままで堅実に夫婦でやっていった方がいい。』というアドバイスを貰ったのに、天狗になっていた俺は『オーナーの考えは古い。』としか思えなかった。
そんな俺に目をつけて、声を掛けてきたのが経営コンサルタントを名乗る『深町ケンジ』という中年の男でした。
深町は建て直しより支店を出すように勧めてきました。
確かに今の店にも愛着があったし、もう一軒店が持てるというのが何より俺には甘い誘惑だった。
深町の事はろくに調べたりもせずにハナから信用してたので俺はいいカモだった様です。
すべてが“嘘”だと気付いた時には一切合切すべてを失っていました。
残ったのは多額の借金のみでした。そして俺を信用してマイホーム資金を一時的に貸してくれた親友にも、それが全く返せないばかりか、俺の借金の保証人にもなってもらっていたのです。
俺は自分の身に何が起きたか分かりませんでした。
嫁と子供には借金の取り立てに合わないように離婚して実家に帰ってもらいました。
そして俺は何もかもがイヤになり逃げ出してしまったのです。
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