エア・フリー 〜存在しない私達〜《後編・絆》
まあ逃げたというより、私は自分の店を無くして、これからは普通に働いても借金は減らないと思い切って九州に飛んだのです。
当時、熊本と宮崎をつなぐハイウエイのトンネル工事が行われていて大金を貰えるという話しを聞いたもので…。
ええ、そしてその時はただひたすらに暗闇で穴を掘る作業が自分にはビッタリのようなきがしたのです。
モチロン掘るのは機械がしてその後の泥を掻き出して行くのですが、無心になれて少しは楽でした。
連絡先は彼にだけ教えていました。
私はある程度まとまった金が出来ると彼に送金して正直、その時はそれがやっとでした。
何も考えずにただ働くしかなかった。
それが数か月続いたでしょうか…。
ところが突然彼は、愛する家族を道連れにこの世を去ってしまったのです。
冬の海へと車ごと飛び込んでしまった。
警察から連絡を受け急いで帰った私を迎えたのは残された彼の長女だけでした。
その時の彼女の怒りと絶望の眼差しは今も忘れる事は出来ません。
弱冠10歳の子を奈落の底に突き落としてしまった。
『ああ 梓。私を許してくれ』
本当は私が死ねば良かったのに……。」
俺はもうそこから先は何も言えなくなった。
当時、熊本と宮崎をつなぐハイウエイのトンネル工事が行われていて大金を貰えるという話しを聞いたもので…。
ええ、そしてその時はただひたすらに暗闇で穴を掘る作業が自分にはビッタリのようなきがしたのです。
モチロン掘るのは機械がしてその後の泥を掻き出して行くのですが、無心になれて少しは楽でした。
連絡先は彼にだけ教えていました。
私はある程度まとまった金が出来ると彼に送金して正直、その時はそれがやっとでした。
何も考えずにただ働くしかなかった。
それが数か月続いたでしょうか…。
ところが突然彼は、愛する家族を道連れにこの世を去ってしまったのです。
冬の海へと車ごと飛び込んでしまった。
警察から連絡を受け急いで帰った私を迎えたのは残された彼の長女だけでした。
その時の彼女の怒りと絶望の眼差しは今も忘れる事は出来ません。
弱冠10歳の子を奈落の底に突き落としてしまった。
『ああ 梓。私を許してくれ』
本当は私が死ねば良かったのに……。」
俺はもうそこから先は何も言えなくなった。