エア・フリー 〜存在しない私達〜《後編・絆》
最初にあの公園で、途方に暮れていた勇をみつけた時はまさか、私の城に招待するとは思わなかったが、声を掛けるとすがるような眼差しで私を見て、まるで捨てられた子犬の様に私に付いて回った勇。

私はどうしても“サヨナラ”が言えずにこうしてココに置いてやったが、すぐにその立場は逆転した。

勇はオツムが軽いからあまり会話は多くないけど、今時の若者にはないピュアな心で皆を魅了する。

まさに癒しの天使は不似合いな場所に居ても尚、その輝きを微塵も失わず、色のなかった日常に暖かい発色をしてくれた。

一度はこの世から消えかかっていた俺の手を引いて引き戻してくれたような感覚。

どうか一日でも長くココに居てくれないか…勇。

弁当の後のデザートをとても幸せそうに食べる勇を見て今日もコイツが居てくれる喜びを噛み締める俺がいた。


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